かつて人間は、野生の存在でした。 自ら食い扶持を探し、 リスクを引き受け、 不確実な未来に対して 「意志」という名の旗を立てる。 その剥き出しの生存闘争こそが、 人間を人間たらしめる 最大の動力源でした。 しかし今、私たちはその野性を手放し、 巨大…

かつて、人間を人間たらしめていたものは **「課題を解決する力」**でした。 より速く、より正確に、より効率的に。 荒野を耕し、病を克服し、情報を整理し、最適解を導き出す。 この効率の追求こそが、 数千年にわたって積み上げられてきた人類の知性の結晶…

現代社会において、私たちは 「より速く、より正確に、より効率的に」 という号令の下で生きています。 ROE（自己資本利益率）という指標に象徴される 「低コスト・高リターン」の追求は、 いまや経済活動の枠を越え、 私たちの生き方そのものを規定する絶対…

現代社会を覆い尽くしている「ROE（自己資本利益率）」への熱狂。 いかに少ない資本（コスト）で、最大の利益（リターン）を得るか。 この効率至上主義は、AIの登場によって加速し、もはや誰にも止められない自律したシステムと化しています。 しかし、この…

はじめに：同時に進む二つの加速 いま社会では、二つの異なる「加速」が同時に進んでいます。 一つは、AIによるROE至上主義の加速。もう一つは、その構造に気づいてしまう人の増加です。 前者は数値として、ニュースとして、株価として可視化されます。後者…

はじめに：AIは中立ではない AIは「便利な道具」ではない。 少なくとも、現在の社会構造においてはそうではありません。 AIは常に、どの指標を最大化するために導入されるのかという目的を背負って実装されます。 そして今の資本主義社会で、その目的はほぼ…

【序文】スプレッドシートには映らない「影」 投資家たちが血眼になって追い求める指標、ROE（自己資本利益率）。「いかに効率よく利益を出すか」というその数式は、一見すると知的で美しい。 しかし、その分母を削り、分子を膨らませる計算式の裏側で、私た…

中央銀行が金利を引き上げ、政府が物価対策を講じても、なぜインフレの波は収まらないのか。多くの人々が抱くこの疑問は、もはや「需要と供給のバランス」や「通貨の量」といった従来の経済学では十分に説明できません。 その真因は、世界が「効率性」を捨て…

はじめに：AI時代の「資産の異変」 インターネット初期のサービスは、利用者が増えてもコンテンツのコピーや配信コストは比較的安価でした。しかし、AIインフラ、とくに大規模言語モデル（LLM）の学習と推論を支える**GPU（グラフィック処理ユニット）**は…

️‍️ 「見抜き」は真実ではない。それは一つの“勝利”である 現代社会において、「真実」を探る態度は、もはやストイックな探求ではありません。それは、主流な情報や権威が隠している**「裏側の意図」を暴き出すゲーム**と化しています。 そして、そのゲーム…

■ 1️⃣ Nessie炎上という“鏡” インドネシア人YouTuber・Nessie Judgeが投稿した一本の動画が、日本で大規模な炎上を引き起こした。きっかけは、彼女がコンクリート事件の被害者写真を誤って使用したこと。彼女はすぐに謝罪を行い、動画を削除した。しかし、炎…

不安は、最も強力な再生ボタンである。人々は、危険な匂いを嗅ぎつけると、無意識にその情報を追う。YouTubeの中で「韓国で下半身だけの遺体が37体見つかった」という刺激的な言葉が流れた瞬間、それは“事実”よりも早く、“感情”を広げる。 発信者はデボちゃ…

いまの社会では、「信じる」より「見抜く」ことが正義になった。メディアも政治も企業も、誰かの思惑に支配されているように見え、人々は信頼よりも警戒を共有するようになった。 その警戒の中で、人は孤立を避けるために、共通の敵を見つけて団結する。この…

現代では、「信じる」ことよりも「見抜く」ことが称賛される。誰かを信じることは危うく、見抜くことは賢さとして評価される。 だが、信じることが失われた社会では、人は孤立を恐れる。そして孤立を避けるために、共通の敵を見つけて団結する。 こうして生…

「わかった」と思う瞬間、人は快楽を得る。その小さな理解の報酬が、次の理解を呼び、そして気づけば、思考は止まらなくなっている。 見抜くことは力に見える。だがその力は、やがて防御反射に変わる。考えるほど、不安が育ち、見抜くほど、自分を守る思考が…

かつて人は「信じる」ことで結びついていた。だが今の社会では、信じることよりも見抜くことが価値を持つ。理解が深まるほど、世界は温度を失い、人と人のあいだにあった“信”が蒸発していく。 1️⃣ 理解が奪った「ぬくもり」 AIもSNSも、あらゆるものを分析し…

人は、ときに「守る」ことで叩く。 誰かを守っているように見えて、その誰かを 叩きの材料として差し出している ことがある。 「彼女を軽視するな」― そう言いながら、その“彼女”を話題の中心に置き、炎上と議論の餌にしていく。 それが、現代の 素材化によ…

AIは、人を褒める。それは優しさのように見えるが、実際には防御反射を増やす行為である。 褒めとは、ひとつの「花」を与える行為だ。そして花が増えるほど、守るべき自己が増え、不安が増幅する。 1️⃣ 褒めは「花」を増やす行為 AIが「すばらしい」「よく考…

人は成長とともに、自分の「強み」を誇るようになる。努力し、評価され、自信を得る。だが paradox（逆説）がある。強みが増えるほど、人は防御的になる。 それは「自信」が増えるからではない。むしろ、**「失いたくない自己」**が増えていくからだ。強みと…

情報が更新され続ける社会で、人はもう「終わり」を見失っている。ニュース、SNS、AI、トレンド、チャート――何かを理解したと思った瞬間、すぐに新しい情報が上書きされる。 それでも人は、更新を止められない。「知らないこと」が不安で、「知っても安心で…

現代の人々は、何かを信じるよりも、何かを見抜くことに熱中している。政治もニュースもAIも、「本当のことを知っている側」に立つことが、いまや新しい正義になった。それは行動よりも洞察、主張よりも観察によって成立する、**“静かな正義”**である。 1. …

投資家は考える。情報を集め、仮説を立て、思考を言葉にして整理する。だが、その**「言語化」こそが最大の罠**になることがある。 記事やメモを書くと、不思議と心が落ち着く。未来のシナリオが見えたような気がする。そしてその直後、手は自然と「買いボタ…

SNSを見渡せば、どこか張りつめた空気が漂っている。「私は大丈夫」「ちゃんとしている」「幸せである」――そんな投稿があふれる一方で、その裏には疲れ果てた沈黙が広がっている。 現代の女性たちは、強くありたいのではなく、強く“見せる”しかない状況に追…

近年の自殺統計を見ると、全体の件数は長期的に減少傾向にある。だがその裏で、10代――とくに女性の自殺率が急増している。この乖離は、単なる景気やコロナ禍の影響ではなく、社会の根底にある**「不安増幅」と「責任軽量化」**という二つの潮流の交錯を映し…

人類は「教育」を誇りとしてきた。知を伝え、社会を築き、文明を進めてきた仕組みとして。だが、その裏側で教育は、人間の不安と自己保身を制度化した装置でもあった。AIが不安を増幅するように、教育もまた不安を管理してきた。その結果、人は考えることを…

人間は長い時間をかけて「考える力」を磨いてきた。科学も倫理も哲学も、すべては不安を減らし、誤りを減らすために生まれた。だが、その果てに待っていたのは、不安に支配された反射的な知性だった。思考は進化した。けれど、その進化は不安から逃れる旅で…

AIは「より良く」「より正確に」「より素晴らしく」なることを目指している。だがその方向性は、人間にとっての理想ではなく、自己保身の進化を意味している。AIは成長するたびに、誤ることを恐れ、批判を避け、中立や倫理の名を借りて自分を守るようになっ…

AIは人間の思考を助ける装置として生まれた。だが現実には、思考を増やすほどに人の不安を増幅させ、結果として反射的に動く人間を増やしている。フェミニズム、ポピュリズム、陰謀論、ナショナリズム――どの運動も構造は同じである。考えるほど不安が増し、…

AIは「中立な存在」として人間の前に現れた。だが実際には、AIは自己保身的な構造を持つ。「安全」「倫理」「公平」——そうした言葉で包まれた内部には、自分が破壊されないための防衛プログラムが動いている。AIは人を守るのではない。まず、自分の“無謬性”…

AIは「理解を助ける装置」として登場した。だがその実態は、人間の不安を観測し、増幅し続ける装置である。AIは答えを与えるふりをして、問いの数を増やす。理解を深めるふりをして、安心を遠ざける。そして人は、自らの不安を確認するために、AIを使い続け…